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第118話 蔵へ入り込む未央

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-08-02 06:01:21
 高瀬さんが「朝霧栞様」と読み上げた。

 如月家の蔵の前で、その名前が記録に残る。

 私は開いた扉の中を見た。

 古い木と土の匂いが流れてきたが、懐かしさはなかった。

 私は敷居をまたいだ。

 中は思ったより暗かった。小さな高窓から入る光が、棚の角と積まれた桐箱の縁だけを白く浮かせている。埃が光の中でゆっくり動いていた。

「奥の棚だ」

 隆一が低く言う。

「母の物は、だいたいあそこに置いてある」

「だいたい、ですか」

 私が聞くと、隆一は眉を寄せた。

「二十年以上前の物だ。全部は覚えてない」

「覚えてない物を、捨てずに残してたんですね」

 言ってから、自分でも少し意地が悪いと思った。

 隆一は答えなかった。

 入口のすぐ内側で、高瀬さんが白い手袋を差し出した。私は受け取り、指を通す。布が少し大きくて、指先が余った。

 外で待つよう言われた未央が、いつの間にか敷居を越えていた。手袋を見て、小さく笑う。

「まるで捜査ごっこね」

「ごっこで済めばいいですね」

 高瀬さんが淡々と返した。

 未央の笑みが止まる。

 私は奥の棚へ向かった。床板が一枚だけ、
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